AI活用概論

プロンプトのエラー制御と品質改善

5プロンプト設計基礎:構造化手法と再現性の確保
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この節の目的は、プロンプトを書いたあとに「出力がずれた」「形式が崩れた」「余計なことまで書かれた」といった問題を見つけ、意図した出力へ近づけるための制御方法を身につけることです。

前の 3-4 では、再現性を高めるために、目的、条件、出力形式、例を固定する考え方を学びました。今回はその続きとして、崩れやすいところを先回りして防ぐ設計を学びます。

この節で最初に覚えてほしい一文は、次の通りです。

良いプロンプトは、良い依頼文で終わらず、失敗しやすい点まで先に設計する。

プロンプト設計が作文と違うのはここです。

「何を書いてほしいか」だけでなく、どう崩れやすいかを考える必要があります。

1. この節でいう「エラー」とは何か

この節でいうエラーは、プログラムの実行エラーだけではありません。

ここでは、出力が目的や条件から外れること全体をエラーと考えます。

たとえば、次のようなものです。

  • 文字数制限を守らない
  • 箇条書き指定なのに段落で返す
  • 高校生向けなのに難しすぎる
  • 入力文にない内容を勝手に補う
  • 要点を3つと指定したのに5つ出す

つまり、文法が正しいかどうかだけでなく、意図どおりかどうかを見る必要があります。

2. プロンプトで起こりやすい3種類のエラー

この章では、エラーをまず三つに分けて考えます。

2-1. 内容エラー

内容そのものが目的からずれるエラーです。

たとえば、

  • 要約なのに細部が増えすぎる
  • 説明なのに大事な前提を飛ばす
  • 入力にない情報を勝手に加える といったものです。

2-2. 形式エラー

出力形式が指示からずれるエラーです。

たとえば、

  • 箇条書き指定なのに段落で返る
  • 3点指定なのに4点出る
  • JSON 指定なのに説明文が混ざる といったものです。

2-3. 読者適合エラー

対象読者に合わないエラーです。

たとえば、

  • 高校生向けなのに大学レベルの語彙を使う
  • 初心者向けなのに前提説明がない
  • 保護者向けなのに説明が短すぎる といったものです。

手を動かす練習1

次の依頼で起こりやすいエラーを、内容・形式・読者適合の3つから考えてください。

この内容をわかりやすくしてください。

例解

  • 内容エラー

何を残すかが指定されていないので、重要点が落ちるかもしれない。

  • 形式エラー

箇条書きか文章かが不明なので、毎回形がぶれやすい。

  • 読者適合エラー

誰向けに「わかりやすい」のかが不明なので、難しさが安定しにくい。

3. エラー制御の基本原則

エラーを減らす基本原則は、次の四つです。

3-1. あいまい語を減らす

「いい感じ」「わかりやすく」「短く」だけでは、解釈の幅が広すぎます。

その代わりに、対象、長さ、要点数、形式を具体化します。

悪い例です。

以下の文章をわかりやすくしてください。

改善例です。

以下の文章を、高校生向けに、200字以内で、
重要点を2つ残して、箇条書き2点で説明してください。

このようにすると、AI が判断しなければならない幅が狭まります。

3-2. 入力と指示を分ける

指示と本文が混ざると、どこまでが依頼でどこからが入力か曖昧になります。

そこで、ラベルや区切りを使って分けます。

[指示]
以下の文章を高校生向けに要約してください。

[入力]
(ここに本文)

こうすると、処理対象が見やすくなります。

3-3. 出力形式を先に固定する

出力の形がぶれるなら、最初に形式を固定します。

出力は、箇条書き3点でお願いします。

あるいは、次のように具体的に書くこともできます。

出力は次の形にしてください。
- 要点1
- 要点2
- 要点3

形式が固定されると、使う側もかなり楽になります。

3-4. 品質基準を明示する

「うまくやって」ではなく、「何を満たせば良いのか」を書きます。

以下の条件を満たしてください。
- 専門用語は必要最小限
- 高校生が1回で読める表現
- 重要点は2つ以上残す

これを入れると、出力を見たあとに「何が満たされていないか」を判断しやすくなります。

4. 品質向上のための「自己確認」を入れる

ここで非常に重要なのが、出力前の自己確認です。

これは「自分で自分を採点してから出す」ような仕組みです。

たとえば次のように書けます。

出力前に、次の条件を満たしているか確認してください。
- 300字以内か
- 箇条書き3点になっているか
- 高校生向けの語彙になっているか
条件を満たしていない場合は、満たすように修正してから出力してください。

この一文が入るだけで、形式崩れはかなり減ることがあります。

ここで大切なのは、「考え方を全部見せて」と頼むことではなく、チェックして修正してから出すという行動を促すことです。

手を動かす練習2

次の依頼に、自己確認ブロックを足してください。

あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
以下の文章を300字以内で要約し、箇条書き3点で出力してください。

例解

あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
以下の文章を300字以内で要約し、箇条書き3点で出力してください。

出力前に次を確認してください。
- 300字以内か
- 箇条書き3点になっているか
- 高校生向けの語彙か
条件を満たしていない場合は修正してから出力してください。

5. 品質向上のために「良い例」と「避けたい例」を使う

品質を上げたいなら、良い例を見せるのは強い方法です。

特に、出力の粒度やトーンをそろえたいときに有効です。

良い例を入れる

[出力例]
- 太陽は自分で光を出す星である。
- 地球へ熱と光を届けている。

これだけで、箇条書きの短さや粒度が安定しやすくなります。

避けたい例を入れる

さらに強くしたいなら、「してほしくない出力」の例を入れることもできます。

[避けたい出力例]
- 専門用語を長く説明しすぎる
- 箇条書きではなく長文にする
- 入力にない情報を付け足す

良い例と避けたい例を並べると、品質の方向がかなり揃いやすくなります。

手を動かす練習3

次の依頼に、出力例を1つ足してください。

中学生向けに、光合成の仕組みを説明してください。
出力は箇条書き2点です。

例解

中学生向けに、光合成の仕組みを説明してください。
出力は箇条書き2点です。

[出力例]
- 植物は光を使って自分の栄養を作る。
- そのとき二酸化炭素を取り入れ、酸素を出す。

6. エラー制御のための分割設計

複雑な依頼を一回でやらせようとすると、出力が崩れやすくなります。

そこで有効なのが、ステップを分ける方法です。

たとえば、いきなり「記事を要約して、見出しを付けて、キーワードも出して」と頼むより、次のように分けたほうが安定しやすいです。

次の順に処理してください。
1. 本文の重要点を3つ抽出する
2. その重要点をもとに200字以内で要約する
3. 最後にキーワードを3つ出す

このようにすると、処理の順番が明確になります。

ただし、分けすぎると読みにくくなるので、本当に崩れやすいところだけ段階化するのがコツです。

7. 品質向上のための観察ポイント

プロンプト改善で大事なのは、「うまくいかなかった」で終わらないことです。

次の観点で見ると、修正箇所が見つけやすくなります。

7-1. 内容は合っていたか

  • 重要点は残っていたか
  • 入力にないことを足していないか
  • テーマから外れていないか

7-2. 形式は守られたか

  • 指定字数内か
  • 箇条書き数は合っているか
  • 形式は崩れていないか

7-3. 読者に合っていたか

  • 語彙の難しさは適切か
  • 前提知識を飛ばしていないか
  • 文体は合っているか

7-4. 次にどう直すべきか

  • 条件を足すべきか
  • 条件を削るべきか
  • 手順を分けるべきか
  • 例を足すべきか

この観察ができると、改善がかなり論理的になります。

つまり、品質向上はセンスではなく、観察基準を持つことから始まります。

8. 実践ミニワーク

次のプロンプトを、エラー制御と品質向上の観点から改善してください。

以下の文章をわかりやすくまとめてください。

改善のヒント

  • 誰向けか
  • 何字くらいか
  • どんな形式か
  • 何を避けるか
  • 出力前の確認は必要か

例解

あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
以下の文章を、高校生向けに、250字以内で要約してください。

条件
- 重要点を2つ残す
- 専門用語は必要最小限
- 入力文にない情報は追加しない

出力形式
- 箇条書き2点

出力前に次を確認してください。
- 250字以内か
- 箇条書き2点か
- 高校生向けの表現か
条件を満たしていない場合は修正してから出力してください。

ここで重要なのは、「わかりやすく」という曖昧語をそのままにせず、

対象、長さ、要点数、禁止事項へ分解したことです。

これが品質改善の基本です。

9. この節で理解すること

この節で理解してほしいのは次の四つです。

  • エラーとは、形式崩れや内容ズレも含めた「意図からの逸脱」である
  • エラー制御には、明確な条件、区切り、形式指定、自己確認が効く
  • 品質向上には、良い例、避けたい例、段階分割が役立つ
  • 改善の鍵は、出力を観察して修正ポイントを言語化すること

まとめ

この節では、プロンプトのエラー制御と品質改善を学びました。

エラーとは、単なるプログラムエラーではなく、内容のズレ、形式の崩れ、読者との不一致も含む広い概念です。

これを減らすためには、明確な条件、区切り、出力形式、自己確認、良い例、避けたい例、段階分割が有効です。

次の 3-6 では、ここまで学んだ構造化、再現性、品質改善の考え方をもとに、プロンプトテンプレート化 を学びます。

つまり、今回は「崩れを防ぐ」、次は「使い回せる型にする」です。

練習問題

問題1

この節でいう「エラー」を一文で説明してください。

問題2

次の依頼の弱点を二つ書いてください。

わかりやすく説明してください。

問題3

次のうち、形式エラーを減らしやすいものを選んでください。

A

要約してください。

B

要約してください。出力は箇条書き3点です。

問題4

自己確認を入れる意味を一文で説明してください。

問題5

次の依頼へ、品質向上のための一文を足してください。

中学生向けに、地震の仕組みを説明してください。

練習問題の答え

答え1

例です。

この節でいうエラーとは、出力が目的・条件・形式から外れてしまうことです。

答え2

例です。

  • 誰向けかがない
  • 長さや形式がない
  • 何を残すべきかがない

答え3

B です。

箇条書き3点という形式が指定されているため、出力の形が安定しやすいからです。

答え4

例です。

自己確認を入れる意味は、条件違反や形式崩れを出力前に減らしやすくするためです。

答え5

例です。

中学生向けに、地震の仕組みを説明してください。
出力前に、専門用語が多すぎないか確認し、多い場合は言い換えてください。
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