実践:用途別プロンプト設計
この節の目的は、ここまで学んだ 役割・条件・出力・構造化・再現性・エラー制御・テンプレート化 を、実際の用途に合わせて書き分けられるようになることです。
ここまでの節では、プロンプト設計の考え方を順番に学んできました。今回はそれを使って、目的に応じて違う型のプロンプトを作る練習をします。
この節で最初に覚えてほしい一文は、次の通りです。
良いプロンプトは、長い文章ではなく、用途に合う部品がそろった実用品である。
つまり、「丁寧に長く頼むこと」が目的ではありません。
大事なのは、その用途に必要な部品を選んで組み立てることです。
この節では、用途を三つに分けて実践します。
- 説明する
- 要約する
- 添削する
この三つを押さえると、かなり多くの場面へ応用できます。
1. 実践の基本手順
用途別にプロンプトを作るときは、毎回この順番で考えると安定します。
- 何をさせたいか を一文で決める
- 誰向けか を決める
- どんな条件で 出してほしいかを書く
- どんな形式で返してほしいか を決める
- 必要なら 例 と 自己確認 を足す
つまり、プロンプト設計は「うまい言い回し」ではなく、必要な要素を落とさない順序が大切です。
2. 用途1:説明プロンプトを作る
最初は「説明する」仕事です。
説明プロンプトは、まだ知らない内容を相手が理解できる形へ変えるときに使います。
たとえば、次のような依頼はかなり弱いです。
光合成を説明して
これでは、
- 誰向けか
- どのくらいの長さか
- どの程度やさしくするか
- 箇条書きか文章か が決まっていません。
そこで、説明プロンプトとして組み立てます。
改善版
[役割]
あなたは中学生向け理科教材を作る先生です。
[タスク]
光合成の仕組みを説明してください。
[条件]
- 中学生向け
- 専門用語は使いすぎない
- 250字以内
- 具体例を1つ入れる
[出力形式]
- 箇条書き3点
この改善で見てほしいのは、役割・条件・出力形式 がそろったことです。
説明プロンプトでは特に、「誰向けか」と「どこまでやさしくするか」が重要です。
説明プロンプトでよく使う条件
- 小学生向け / 中学生向け / 高校生向け
- 専門用語は使いすぎない
- 具体例を入れる
- 原因と結果が分かるようにする
- 〇字以内
手を動かす練習1
次の依頼を、説明プロンプトとして改善してください。
地震の仕組みを教えて
例解
[役割]
あなたは高校生向け地学教材を作る先生です。
[タスク]
地震の仕組みを説明してください。
[条件]
- 高校生向け
- 難しすぎる専門用語は減らす
- 300字以内
- 原因と結果を入れる
[出力形式]
- 箇条書き3点
3. 用途2:要約プロンプトを作る
次は「要約する」仕事です。
要約プロンプトは、長い情報から重要点を残しつつ短くしたいときに使います。
たとえば、次の依頼は弱いです。
この文章を短くして
これでは、
- どのくらい短くするのか
- 誰向けなのか
- 何を残すべきなのか
- どんな形式で返すのか が分かりません。
そこで、要約プロンプトとして組み立てます。
改善版
[役割]
あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
[タスク]
以下の文章を要約してください。
[条件]
- 高校生向け
- 200字以内
- 重要点を2つ残す
- 入力文にない情報は追加しない
[出力形式]
- 箇条書き2点
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 200字以内か
- 箇条書き2点か
- 高校生向けの語彙か
要約プロンプトでは特に、何を残すか と 何を増やさないか が重要です。
説明と違って、要約では「勝手な補足」が品質を落とすことがあります。
要約プロンプトでよく使う条件
- 〇字以内
- 要点を2つ / 3つ残す
- 入力文にない情報は追加しない
- 背景が分かるようにする
- 専門用語は減らす
手を動かす練習2
次の依頼を、要約プロンプトとして改善してください。
このニュースをまとめて
例解
[役割]
あなたは高校生向け時事教材を編集する先生です。
[タスク]
以下のニュース記事を要約してください。
[条件]
- 高校生向け
- 250字以内
- 背景が分かるようにする
- 重要点を3つ残す
- 入力文にない情報は追加しない
[出力形式]
- 箇条書き3点
4. 用途3:添削プロンプトを作る
三つ目は「添削する」仕事です。
添削プロンプトは、すでにある文章を読みやすくしたり、伝わりやすくしたりするときに使います。
たとえば、次の依頼はかなり広すぎます。
この文章を直して
これでは、
- 何をどう直すのか
- 意味は変えてよいのか
- 読み手は誰なのか
- どのように返すのか が分かりません。
そこで、添削プロンプトとして組み立てます。
改善版
[役割]
あなたは高校生向け文章を添削する編集者です。
[タスク]
以下の文章を添削してください。
[条件]
- 元の意味は変えすぎない
- 読みやすさを上げる
- 冗長な表現を減らす
- 高校生が一読で理解しやすい表現にする
[出力形式]
- 修正文
- その下に改善ポイントを3つ箇条書き
添削プロンプトでは特に、何を守るか が大切です。
改善しすぎて、元の意味を壊してしまうことがあるからです。
添削プロンプトでよく使う条件
- 元の意味は変えすぎない
- 読みやすさを上げる
- 冗長表現を減らす
- 丁寧な文体にする
- 強みが伝わるようにする
手を動かす練習3
次の依頼を、添削プロンプトとして改善してください。
自己紹介文をよくして
例解
[役割]
あなたは就職活動向け文章を添削するキャリアアドバイザーです。
[タスク]
以下の自己紹介文を改善してください。
[条件]
- 強みが伝わるようにする
- 丁寧な文体にする
- 長すぎる表現を減らす
- 内容を盛りすぎない
[出力形式]
- 改善後の自己紹介文
- 改善ポイントを3つ箇条書き
5. 説明・要約・添削の違いを見分ける
この三つは混ざりやすいです。
ですが、目的が違います。
説明
- まだない説明を新しく作る
- 目的は理解を助けること
要約
- 元の情報を圧縮する
- 目的は重要点を残して短くすること
添削
- すでにある文章を改善する
- 目的は意味を保ちつつ質を上げること
同じ「文章を扱う仕事」でも、用途が違えば、プロンプト設計も変わります。
手を動かす練習4
次の依頼が「説明・要約・添削」のどれに近いか考えてください。
- 教科書の内容を中学生向けに話し直す
- 長い記事を200字にまとめる
- 自分で書いた作文を読みやすく直す
例解
- 説明
- 要約
- 添削
6. 用途別プロンプト設計でよくある失敗
6-1. 用途を決めずに書き始める
説明したいのか、短くしたいのか、直したいのかが曖昧だと、プロンプトも曖昧になります。
最初に「この依頼は何系か」を決めるのが大切です。
6-2. 条件を使い回しすぎる
説明に向く条件と、要約に向く条件は少し違います。
たとえば、要約では「入力文にない情報は追加しない」が重要ですが、説明では具体例を入れるほうが大事なことがあります。
6-3. 出力形式を最後まで決めない
説明なら箇条書きか段落か、要約なら要点数はいくつか、添削なら修正文だけか改善ポイントも付けるか。
ここを決めないと、かなりぶれます。
7. ミニ実践:悪いプロンプトを直す
次の悪いプロンプトを見てください。
理科の内容をわかりやすくして
この依頼には、少なくとも次が足りません。
- 誰向けか
- どんな用途か
- どんな形式で返すか
- どのくらいの長さか 改善版の一例はこうです。
[役割]
あなたは中学生向け理科教材を作る先生です。
[タスク]
以下の理科の内容をわかりやすく説明してください。
[条件]
- 中学生向け
- 専門用語は必要最小限
- 250字以内
- 日常の例を1つ入れる
[出力形式]
- 箇条書き3点
見てほしいのは、きれいな言い回しではなく、用途に必要な部品がそろったことです。
8. 実践用の最小テンプレート
この節の実践で使う最小テンプレートは、次です。
[役割]
あなたは[役割]です。
[タスク]
[説明 / 要約 / 添削のどれか]をしてください。
[条件]
- [対象読者]
- [長さ]
- [含めること / 避けること]
[出力形式]
- [形式]
このテンプレートだけでも、かなり多くの依頼が安定します。
用途ごとに切り替えて練習しやすいので、この後の演習にも使いやすいです。
9. この節で持ち帰ること
この節で持ち帰ってほしいことは、次の四つです。
- 用途が違えば、プロンプト設計も変わる
- 説明・要約・添削は、それぞれ目的が違う
- 役割・条件・出力形式は、用途に合わせて選ぶ必要がある
- 良いプロンプトは、長い文章ではなく、用途に必要な部品がそろったもの
まとめ
この節では、説明・要約・添削 の三つを例に、用途別プロンプト設計を学びました。
大事だったのは、長く書くことではなく、目的に合わせて、役割、条件、出力形式を選び分けることです。
同じ「文章を扱う仕事」でも、説明と要約と添削では設計のしかたが違うと分かれば、この節の目的は達成できています。
次の 3-8 では、この実践をさらに進めて、品質改善の演習を行います。
つまり、今回は「用途に合わせて作る」、次は「作ったものを見て直す」です。
練習問題
問題1
説明・要約・添削の違いを、それぞれ一文で説明してください。
問題2
次の依頼を、説明プロンプトとして改善してください。
火山を説明して
問題3
次の依頼を、要約プロンプトとして改善してください。
この文章を短くして
問題4
次の依頼を、添削プロンプトとして改善してください。
この自己紹介文を直して
問題5
次の依頼は、説明・要約・添削のどれに最も近いですか。
ニュース記事の重要点だけを200字でまとめる
練習問題の答え
答え1
例です。
説明は新しく理解しやすい内容を作ること、要約は元の情報を短く整理すること、添削は元の文章を改善することです。
答え2
例です。
[役割]
あなたは高校生向け地学教材を作る先生です。
[タスク]
火山の仕組みを説明してください。
[条件]
- 高校生向け
- 300字以内
- 専門用語は使いすぎない
- 具体例を1つ入れる
[出力形式]
- 箇条書き3点
答え3
例です。
[役割]
あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
[タスク]
以下の文章を要約してください。
[条件]
- 高校生向け
- 200字以内
- 重要点を2つ残す
[出力形式]
- 箇条書き2点
答え4
例です。
[役割]
あなたは就職活動向け文章を添削するキャリアアドバイザーです。
[タスク]
以下の自己紹介文を添削してください。
[条件]
- 強みが伝わるようにする
- 丁寧な文体にする
- 長すぎる表現を減らす
[出力形式]
- 改善後の自己紹介文
- 改善ポイントを3つ箇条書き
答え5
要約です。
元の情報を短く整理して、重要点だけを残す用途だからです。
