演習:プロンプトの品質改善
この節の目的は、出力を見て、どこが悪いのかを言葉にし、プロンプトを改善できるようになることです。
ここまでの 3-1 から 3-7 で、プロンプトは入力設計であり、役割・条件・出力をそろえ、構造化し、再現性を高め、テンプレート化して使えることを学びました。
今回はその総仕上げとして、実際に失敗した出力を前提に、どこをどう直せば品質が上がるかを練習します。
この節で最初に覚えてほしい一文は、次の通りです。
品質改善とは、出力の不満を感覚で終わらせず、原因を分解して修正点へ変えること。
「なんか違う」で終わると、次も同じ失敗をします。ですが、「どこが違うのか」を言えれば、改善できます。この節では、その見方と言い方を身につけます。
1. 品質改善は「出力を観察すること」から始まる
品質改善で最初にやることは、新しいプロンプトを書くことではありません。最初にやるべきなのは、今の出力を観察して採点することです。
たとえば、次の依頼を考えます。
高校生向けに、太陽光発電の仕組みを説明してください。
この依頼に対して、もし出力がこうだったとします。
太陽光発電は太陽電池モジュール、パワーコンディショナ、接続箱などで構成され、発電効率や変換効率が重要です。系統連系の考え方も理解するとよいでしょう。
この出力は、完全に間違っているわけではありません。けれど、高校生向けとしては少し難しいかもしれません。ここで必要なのは、「悪い」と言うことではなく、どの観点でズレたかを整理することです。
この節では、品質を見る観点を次の4つに固定します。
- 内容
- 形式
- 読者適合
- 制約順守
この4つで見ると、改善ポイントがかなり見えやすくなります。
2. 品質を見る4つの観点
2-1. 内容
まず見るのは、何を言っているかです。テーマから外れていないか。重要な点が落ちていないか。入力にないことを勝手に補っていないか。内容が合っていないと、形式がきれいでも使いにくいです。
2-2. 形式
次に見るのは、どういう形で返ってきたかです。箇条書き指定なのに段落になっていないか。3点指定なのに4点になっていないか。表やJSONの形が崩れていないか。形式は、使う側の作業効率に直結します。
2-3. 読者適合
三つ目は、誰向けとして適切かです。高校生向けなのに専門的すぎないか。初心者向けなのに前提知識を飛ばしていないか。保護者向けなのに説明が短すぎないか。ここは、役割と条件の設計に強く関係します。
2-4. 制約順守
最後は、こちらが指定した条件を守ったかです。字数、禁止事項、出力形式、トーン、根拠範囲などが守られているかを見ます。条件違反が多いと、再現性はかなり下がります。
手を動かす練習1
次の出力を、4観点で見てください。
依頼
中学生向けに、火山の仕組みを200字以内で説明してください。箇条書き2点で出力してください。
出力
火山は地下にあるマグマが地表へ出てくる現象です。プレート運動やマグマ溜まり、噴火様式なども関係し、火山灰や火砕流が発生する場合があります。
例解
- 内容
大きくは合っているが、中学生には少し専門語が多い。
- 形式 箇条書き2点になっていない。
- 読者適合
「噴火様式」「火砕流」などが少し重い。
- 制約順守
200字以内の可能性はあるが、形式条件を守れていない。 このように分けて見るだけで、修正ポイントはかなり見つけやすくなります。
3. 品質改善は「足す・削る・分ける」で考える
出力が悪いとき、修正方法は大きく三つに整理できます。
3-1. 足す
条件や対象や例が足りないなら、足します。たとえば「高校生向け」がないなら入れる。「箇条書き3点」がないなら入れる。「入力文にないことを追加しない」がないなら入れる。この改善は、情報不足によるズレに効きます。
3-2. 削る
条件を盛りすぎて矛盾しているなら、削ります。たとえば、「短く、詳しく、やさしく、専門的に」のように、両立しにくい条件が同時に入っていると、出力はぶれやすくなります。この改善は、条件過多による混乱に効きます。
3-3. 分ける
一回で多くをやらせすぎているなら、段階に分けます。たとえば、「要点抽出」「要約」「見出し作成」を一気にやらせるより、段階を分けたほうが安定しやすいです。この改善は、タスク過密による崩れに効きます。
4. 演習1:説明文の品質改善
まずは説明系の品質改善です。
元の依頼
地震の仕組みを説明してください。
出力例
地震はプレート境界などで地殻に歪みがたまり、限界に達すると断層運動が起きて揺れになります。
この出力は、内容としては悪くありません。ただし、これを「高校生向け授業資料の一部」として使うなら、少し足りないかもしれません。
足りない点を言葉にすると、次のようになります。
- 誰向けかが反映されていない。
- 長さや形式が未指定。
- 具体例や要点整理がない。
改善版プロンプト
[役割]
あなたは高校生向け地学教材を作る先生です。
[タスク]
地震の仕組みを説明してください。
[条件]
- 高校生向け
- 250字以内
- 原因と結果が分かるようにする
- 専門用語は必要最小限
- 具体例を1つ入れる
[出力形式]
- 箇条書き3点
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 箇条書き3点か
- 250字以内か
- 高校生向けの表現か
ここでは「足す」改善をしています。対象、長さ、形式、確認条件が増えました。こうすると、説明文の品質はかなり安定しやすくなります。
手を動かす練習2
次の依頼を、説明系として品質改善してください。
火山について説明して
例解
[役割]
あなたは高校生向け地学教材を作る先生です。
[タスク]
火山の仕組みを説明してください。
[条件]
- 高校生向け
- 250字以内
- 原因と結果が分かるようにする
- 専門用語は必要最小限
- 具体例を1つ入れる
[出力形式]
- 箇条書き3点
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 箇条書き3点か
- 250字以内か
- 高校生向けの表現か
5. 演習2:要約文の品質改善
次は要約系です。要約では、特に「何を残すか」「何を増やさないか」が大切です。
元の依頼
この文章を要約してください。
出力例
この文章では、いろいろなことが説明されています。
これは内容が薄すぎます。何が悪いかを4観点で見ると、次のようになります。
- 内容
具体性がない。何を説明しているか分からない。
- 形式
一文ではあるが、要約として情報が足りない。
- 読者適合 読者以前に内容が弱い。
- 制約順守
字数や要点数の指定がないので、良し悪しを評価しにくい。 つまり、ここでは「内容の質」と「評価基準の不足」が問題です。
改善版プロンプト
[役割]
あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
[タスク]
以下の文章を要約してください。
[条件]
- 高校生向け
- 200字以内
- 重要点を2つ残す
- 入力文にない情報は追加しない
[出力形式]
- 箇条書き2点
[出力例]
- 太陽は自分で光を出す星である。
- 地球へ光と熱を届けている。
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 200字以内か
- 箇条書き2点か
- 重要点が2つあるか
ここでは、形式だけでなく「重要点を2つ残す」という品質基準を明示しています。品質改善では、何が良い要約かを先に言葉にすることが大切です。
手を動かす練習3
次の依頼を、要約系として品質改善してください。
ニュースをまとめて
例解
[役割]
あなたは高校生向け時事教材を編集する先生です。
[タスク]
以下のニュース記事を要約してください。
[条件]
- 高校生向け
- 250字以内
- 重要点を3つ残す
- 背景が分かるようにする
- 入力文にない情報は追加しない
[出力形式]
- 箇条書き3点
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 250字以内か
- 箇条書き3点か
- 重要点が3つあるか
- 高校生向けの表現か
6. 演習3:添削文の品質改善
添削系では、「直しすぎ」もエラーになります。つまり、改善のしすぎで元の意味を壊すことがあります。
元の依頼
この文章を直してください。
出力例
(元の内容をかなり変えた別の文章)
この場合、読みやすくなっていても、元の意図が消えていたら困ります。だから添削系では、「何を守るか」を強く書く必要があります。
改善版プロンプト
[役割]
あなたは高校生向け文章を添削する編集者です。
[タスク]
以下の文章を添削してください。
[条件]
- 元の意味は変えすぎない
- 読みやすさを上げる
- 冗長表現を減らす
- 高校生が読みやすい表現にする
[出力形式]
- 修正文
- 改善ポイントを3つ箇条書き
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 元の意味を壊していないか
- 修正文が読みやすくなっているか
- 改善ポイントが3つあるか
このように、「意味を変えすぎない」という条件を入れることで、添削系の品質はかなり安定します。
手を動かす練習4
次の依頼を、添削系として品質改善してください。
自己紹介文をよくして
例解
[役割]
あなたは就職活動向け文章を添削するキャリアアドバイザーです。
[タスク]
以下の自己紹介文を添削してください。
[条件]
- 元の意味は変えすぎない
- 強みが伝わるようにする
- 丁寧な文体にする
- 長すぎる表現を減らす
[出力形式]
- 改善後の自己紹介文
- 改善ポイントを3つ箇条書き
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 元の意味を壊していないか
- 強みが伝わる内容か
- 改善ポイントが3つあるか
7. 品質改善のときにやってはいけないこと
7-1. 何でも条件を足す
悪い出力を見ると、条件をどんどん足したくなります。ですが、条件を増やしすぎると矛盾しやすくなります。必要なのは、原因に効く条件だけを足すことです。
7-2. 出力を見ずに直す
品質改善は、実際の出力を見てからやるべきです。頭の中だけで修正すると、何が原因だったか分かりにくいです。
7-3. 一気に全部変える
役割も条件も形式も例も全部一気に変えると、何が効いたか分かりません。改善は、少しずつ変えて比べるほうが強いです。
8. 品質改善のチェックシート
実践で迷ったら、次のチェックシートで見てください。
出力を見たあとに確認すること
- 内容はテーマに合っているか
- 読者に合う難しさか
- 指定した形式を守っているか
- 字数や点数などの条件を守っているか
- 入力にないことを勝手に足していないか
- 今回の失敗に効く修正点は一つに絞れるか
このチェックシートがあれば、「なんか違う」から「ここが違う」へ進めます。
9. 実践ミニワーク
次の依頼を、品質改善の観点から修正してください。
この説明をわかりやすくしてください。
例解
[役割]
あなたは高校生向け教材を編集する先生です。
[タスク]
以下の説明文をわかりやすく言い換えてください。
[条件]
- 高校生向け
- 220字以内
- 重要点を2つ残す
- 専門用語は必要最小限
- 入力文にない情報は追加しない
[出力形式]
- 箇条書き2点
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 220字以内か
- 箇条書き2点か
- 高校生向けの表現か
- 入力にない情報を追加していないか
ここで重要なのは、「わかりやすく」という曖昧語をそのままにせず、対象、長さ、要点数、禁止事項へ分解したことです。これが品質改善の基本です。
10. この節で理解すること
この節で持ち帰ってほしいことは次の四つです。
- 品質改善とは、出力を観察して問題を分解し、修正点へ変えること
- 品質は、内容・形式・読者適合・制約順守の4観点で見ると分かりやすい
- 改善の基本操作は、足す・削る・分ける、である
- 自己確認、出力例、段階分割を入れると品質は安定しやすい
まとめ
この節では、品質改善を「出力を見て、問題を観点ごとに分解し、足す・削る・分けるで直す作業」として学びました。
内容、形式、読者適合、制約順守の4観点で見れば、改善ポイントはかなり見えやすくなります。
また、自己確認、出力例、段階分割を入れることで、品質はかなり安定します。
次の 3-9 では、この章全体を振り返りながら、次章のテキスト生成活用へ接続します。
つまり、今回は「直す力」を学び、次は「その力を使って文章生成へつなげる」段階です。
練習問題
問題1
品質改善を一文で説明してください。
問題2
次の出力の問題を、内容・形式・読者適合・制約順守の観点から一つずつ書いてください。
依頼
高校生向けに、地震の仕組みを200字以内で箇条書き2点で説明してください。
出力
地震はプレート境界における応力蓄積と断層破壊によって発生する現象です。
問題3
プロンプト改善の基本操作として適切なのはどれですか。
- 足す・削る・分ける
- 長くする・短くする・消す
- 丁寧に頼む・強く頼む・何度も頼む
問題4
自己確認を入れる意味を一文で説明してください。
問題5
次の依頼を品質改善してください。
このニュースをわかりやすくまとめて
練習問題の答え
答え1
例です。
品質改善とは、出力のズレを観察して、原因を分解し、プロンプトを修正して意図へ近づけることです。
答え2
例です。
- 内容
原因は書いているが、説明として少し情報が足りない。
- 形式 箇条書き2点になっていない。
- 読者適合
「応力蓄積」「断層破壊」が高校生にはやや難しい。
- 制約順守
200字以内かもしれないが、形式条件を守っていない。
答え3
正解は 1. 足す・削る・分ける です。
答え4
例です。
自己確認を入れる意味は、条件違反や形式崩れを出力前に減らしやすくするためです。
答え5
例です。
[役割]
あなたは高校生向け時事教材を編集する先生です。
[タスク]
以下のニュースを要約してください。
[条件]
- 高校生向け
- 250字以内
- 背景が分かるようにする
- 重要点を3つ残す
- 入力文にない情報は追加しない
[出力形式]
- 箇条書き3点
[自己確認]
出力前に次を確認してください。
- 250字以内か
- 箇条書き3点か
- 高校生向けの表現か
- 背景が分かるか
